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社会も地球も“健康”に。明治グループ初のコーポレートCM制作に込めた思い。

明治グループは、2025年1月にコーポレートCMの配信をスタートしました。明治グループがコーポレートCMを制作するのは、2011年の経営統合以来初めてのことです。

CMの舞台はアフリカの南西に位置するガーナ共和国(以下ガーナ)。ガーナと言えば、世界有数のカカオの産地ですが、CMの撮影場所にガーナを選んだ背景には、それだけに留まらない同グループとの深い関わりがありました。
明治ホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション部長の山下 舞子さんに、コーポレートCM制作の経緯や特に印象に残っているシーン、CMを通じて伝えたいメッセージなどについて聞きました。

プロフィール
山下 舞子
明治ホールディングス株式会社 コーポレートコミュニケーション部長
2001年株式会社 明治(当時:明治製菓株式会社)に入社。菓子開発研究所を経て、2019年3月まで菓子商品開発部にてチョコレート商品全般の開発に従事。2019年4月より明治ホールディングス株式会社 サステナビリティ推進部へ異動。サステナビリティという観点で新たな価値創造に取り組んだ後、2024年4月にコーポレートコミュニケーション部長に就任。明治グループのコーポレートブランド価値向上に向け、取り組みを推進している。

おいしいチョコレートの背景にある“現実”を伝えるために

――明治グループとしてコーポレートCMを制作したのは、今回が初めてとお聞きしました。制作の経緯について教えてください。

 

山下 私たちが大切にしてきた「健康」の考え方を、生活者の皆さんにしっかりとお伝えしたいと思ったことがきっかけです。
明治グループは「食品」と「医薬品」の大きく2つの事業を展開していて、2021年からは「健康にアイデアを」をグループスローガンに据えて、さまざまな事業を展開してきました。

▲明治グループが2021年に掲げたグループスローガン「健康にアイデアを」

「健康」と聞くと、その対象としては「人」の身体の健康を思い浮かべる方が多いと思いますが、私たちが考える健康は人に限りません。お客さまはもちろん、私たちが提供している製品を作っている社員、製品の原材料を作ってくださっている生産者が生活する「社会」、原材料そのものを生み出している自然や動物などの「地球環境」。この全てが健康であって初めて、私たちの事業は成り立ちます。

このように「人」だけでなく「社会」や「地球」の健康にも目を向けながら、より良い未来づくりに貢献していきたい。こうした思いから、サステナビリティを意識した活動にも力を入れてきました。

ただ、多くの方がmeijiブランドに対して抱くイメージは「おいしそう」「親しみやすい」「身近」といった日常に寄り添ったもので、長く続けてきたサステナビリティの活動についてはあまり知られていません。そこで明治グループが大切にしている価値観や取り組みについてお伝えすべく、コーポレートCMを初めて制作することにしました。

――そうしたメッセージを伝えるコーポレートCMの撮影場所に、ガーナを選んだのはなぜなのでしょうか
山下 まず、明治グループが行ってきたカカオ産地への支援活動「meiji cocoa support(メイジ・カカオ・サポート)」の支援地の一つがガーナだったためです。「meiji cocoa support」ではチョコレートの原料であるカカオ農家をあらゆる角度から約20年近くにわたって支援してきた実績があり、当社が考える「健康」を実現するための代表的な活動の一つといえます。

▲meiji cocoa supportで行ったガーナへの支援の一例

この活動はアフリカ・中南米・アジアなどの世界各地に広がっていますが、中でもガーナは弊社で調達させていただいているカカオの約8割を占めており、児童労働や森林破壊といった社会課題が深刻なエリアでもあります。
当社1社で全てを解決するのは難しいものの、チョコレートを提供している企業として、食べる人を幸せにするチョコレートの背景にはつらい現実もあるのだ、と伝える責任があります。ガーナの課題とその解決を目指す取り組みの価値を、リアリティを持って伝えるためには現地での撮影が必須だと考えました。

チョコレートを“食べる人”も“作る人も”幸せに

――チョコレートの原材料であるカカオは、どのような環境で作られているのでしょうか?
山下
 私もガーナに行くのは初めてでしたが、日本とは全く違う環境でした。

首都のアクラはかなり発展していて、治安を除けば日本とほとんど変わらない環境です。ただ、当社が調達しているカカオを作ってくださっている農家は、アクラから飛行機に乗って40分、そこから車で2~4時間ほどの内陸部にあり、電気・水道・ガスといったインフラは整備されていません。子供たちが上半身裸で遊んでいて、土に堀った穴をトイレとして使っていました。
その良し悪しは私のモノサシでは測れませんが、日本とは全く違う環境でカカオが作られていることを改めて実感しましたね。

――ガーナの撮影現場で、特に印象に残っているシーンを教えてください。
山下
 やはり子供たちの笑顔ですかね。「meiji cocoa support」の活動の一環である「チョコレートクラス」の様子を撮影したシーンでは特に子供たちの楽しそうな姿を見ることができました。

チョコレートクラスは、カカオ農家の子供たちが通う小学校で開催している“チョコレート作りの授業”を行う教育支援です。
カカオ農家の子供たちは、カカオの収穫は手伝うこともありますが、そのカカオを使ってチョコレートを作ることはしないんですね。でも、自分たちのお父さんやお母さんが育てているカカオを使ってチョコレートを作って食べられたら、自分たちの両親や仕事に対して、誇りを持てるようになる。そんな思いから始まった取り組みでした。

――カカオ豆からチョコレートをどのように作るのでしょうか?
山下
 まず炭で火を起こし、カカオ豆をフライパンでいります。その後、すり鉢とすりこぎのようなもので、いったカカオ豆をつぶしていくんですね。そうするとトロトロになってくるので必要な材料を足しながら型に流し込み、冷やして固めるとチョコレートが完成します。

私たちも子供たちと一緒にチョコレートを作る中で、言葉は全く通じないながら「おいしい」とか「混ぜて」といったジェスチャーを交えて交流させてもらって楽しかったです。

――チョコレートクラスの他にも、「meiji cocoa support」の取り組みにまつわるシーンはありますか?
山下
 今回のCMでは、森林減少を食い止めるための植樹の仕方を伝える営農指導のシーンもあります。これは明治のテスト農園で、自然の生態系に倣って植樹することにより森のような環境を作る「アグロフォレストリー」農法で農園を作ろうとしているところです。

アマゾンでは大規模な森林伐採によって森が消えることが大きな社会問題になっています。そこで、低・中・高と高さが違う木を組み合わせながら森の生態系に倣ったかたちで植樹することにより、森を再生させようという取り組みが進められています。また、その際に経済的な需要がある経済作物を植えておくと、農家の方が収穫・販売して生活の糧を得ることもできます。

当社ではすでにブラジルのアマゾンに近いエリアで、アグロフォレストリー農法を活用して栽培されたカカオを継続的に購入していくことで、カカオ農家の支援を行っています。この農法をガーナにも適用できるのではないかと考え、ガーナで農園をお借りして実験を始めたところです。

――撮影を通じて、自身の思いや仕事へのスタンスに変化はありましたか?
山下
 “ただの物売り”では嫌だなと改めて思いました。
私は20年近くチョコレートの開発に携わり、皆さんにおいしいチョコレートを提供することに注力してきたのですが、それだけではダメだなと。「meiji THE Cacao(明治 ザ・カカオ)」の前身である「meiji THE Chocolate(明治 ザ・チョコレート)」を開発したときには、関わる人全てが笑顔になれるサステナブルな循環をつくっていくべきだという思いがすでにあったのですが、今回ガーナに行ったことでその思いがより強くなりました。
食べる人たちだけがうれしいのではなく、チョコレートに関わる全ての人がうれしい状態を目指したい。このCMを通じて、私たちのそうした思いが生活者の皆さんにも伝わるといいなと思っています。

商品を作りながら社会課題の解決に取り組む

――今回のCMでは主に「meiji cocoa support」の取り組みが登場しましたが、明治グループでは他にどのような取り組みを行っているのでしょうか?

▲明治グループが取り組む7つの社会課題

山下 本当に多岐にわたる活動をさせていただいています。明治ホールディングスのサステナビリティのページでは、7つの社会課題を明治の製品や取り組みにひもづけながら解説しています。
分かりやすい例の一つが「循環型酪農の推進」ですね。

牛のゲップが地球温暖化を助長すると聞いたことがある方も多いかと思います。確かに牛のゲップの中にはメタンという温室効果ガスが含まれるのですが、私たちは牛乳から栄養補給をさせてもらっているわけですから、単に「じゃあ牛乳を飲まなければいいじゃん」という話にはならない。牛の自然な代謝によって生まれてくる温室効果ガスをどうしたら抑えることができるのかを考えることは、牛の“生きる権利”を大切にすることにもつながります。そうした観点から、排せつ物の有効活用をはじめとした有機酪農を取り入れた「明治オーガニック牛乳」を作っています。

酪農家さんへの支援のプログラムとしては「MDA(Meiji Daily Advisory)」という酪農経営を支援する活動を行っています。これも明治のパートナーである酪農家さんと何年もかけて構築してきました。
明治グループは食品を提供しているイメージが強いと思うのですが、食品の大本となる原材料の持続可能性に向けたサステナブル調達も行っています。弊社の重要原材料であるカカオと牛乳に関する取り組みを強く推進しているところです。

――今後はどのような取り組みを展開していきたいと考えていますか?
山下
 コーポレートコミュニケーションを担当する立場として、明治グループが目指す「健康」や「より良い未来」の考え方を社員に理解してもらうとともに、生活者の皆さんにも広く知っていただきたいと思っています。2026年までには社内外へのコミュニケーションを強化していきたいですね。「社会」の健康や「地球」の健康はどういうことか、明治グループは実際に何をするのかをファクトベースで表現し、世の中の皆さんに伝えていきたいです。